2009年7月11日土曜日

戦地へ赴く者の心構え(4)与えられるもの

 日本人としてどんなに立派な人生を送ってきても、戦場に関しては経験値が低くて、最前線の兵隊の足手まといになってしまうのは避けられない。そんな中で良い人間関係を作るのは、戦場でも役に立ちそうな技能を持っていることが手っ取り早い。この「インシデンツ」に連載をしている安田純平さんは、料理の腕前で、イラクの軍施設へ入り込めた。このような特技に頼ると、人間関係の構築は、意外と簡単で意外とスムーズ、そして、ワールドワイドに通用する。

 私がニカラグアの最初の戦場で前面に出したのは、測量技術だった。日本の建設会社の3年間弱の経験で養った測量技術は、ニカラグアの最前線では、最新技術だった。日本が技術大国であることを実感できた場面だ。最初は、戦闘地域での鉄橋工事での測量をやり、これは、建設会社での基礎工事と求められるものが似ていたのでスムーズだった。その後は、戦闘部隊に、ジャングル戦で展開する部隊のフォーメーションを維持するための平板測量を導入したのだが、これが、なかなか試行錯誤が必要で簡単ではなかった。このような、試行錯誤から生まれた仲間意識は強い。それは、こういうやり取りのなかった戦場と、ノウハウ交換のあった戦場での違いか ら明確だった。

 学生を終えてすぐにジャーナリスト業に入ってしまうと、このような役立てる技能を何年たっても身につけられないこともある。取材ノウハウというのは、現場の兵隊の役に立てるノウハウであることが少ないからだ。しかし、たかだか2~3年間で習得できるノウハウでも、戦場ではありがたがられるものがる。それは、戦場の兵士には若者が多く、人生が未熟だからだ。測量ノウハウの提供は、その後、クロアチア軍、チェチェンゲリラ部隊などでも威力を発揮した。

 人間関係はどんなに綺麗ごとを言っても、ギブ・アンド・テイクである。自分は、戦場の彼らになにを与えられるのかは、日本を出る前から計算しておいたほうがいいだろう。金や物をあげるのもよいが、やはり、ノウハウを提供するほうが、敬意をもってもらえたような気がする。

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