2009年7月5日日曜日

裁判員制度広報用DVD


 「裁判員制度」(後注)が実施されることを受け、3月から法務省は全国約5000店のビデオレンタル店を通じ、裁判員制度広報用DVDを無料レンタルしている。タイトルは、実写版『裁判員制度――もしもあなたが選ばれたら――』(写真・以下、『裁判員制度』)とアニメ版『総務部総務課山口六平太 裁判員プロジェクトはじめます!』の2つがある。

 拙宅の近所のビデオレンタル店には、それぞれ3本ずつが置かれている。客の興味はひくようで、いつも数本が「貸出中」だ。先日、『裁判員制度』をレンタルしてみた。

 監督が中村雅俊、出演が中村以下、西村雅彦、加藤夏希、橘ユキコ、樋口浩二、川俣しのぶ、野沢太三、渋谷哲平、金子貴俊、川崎麻世というそうそうたる顔ぶれ。ドラマとして、一定の水準はクリアしていると期待していたが、そうではなかった。

 まず役者のセリフや演技が機械的だ。法務省が企画・製作しているので、それらが細かく指定されているのであろう。各人の持ち味が生かされていないというより、誰が出演しても変わらない印象を受ける。

 次に舞台装置が安物すぎる。メインとなる法廷が講堂にパイプいすを並べてつくられているのは、ちょっと驚いた。裁判官や裁判員は、「非常口」の表示灯があるドアから出入りするのだ。

 ストーリーはひどい。市民は裁判員に選任されることを逃れようとし、もし選任されても、まじめに評議を行わない無責任な存在として描かれている。それを裁判官がいさめて、判決へ導く。法務官僚が国民を見下している様子がありありだ。

 殺人未遂事件で、被告・弁護側は「包丁で被害者を脅し、もみ合ううちに、包丁が被害者の腹部に刺さった」と主張するが、検察側は「殺意を持ち、いきなり刺した」と主張する。裁判員は「自分が包丁を向けられたら、殺意を感じる」として、殺人未遂罪の成立を認める。法務官僚が期待する「国民のみなさんの視点、感覚が、裁判の内容に反映される」(法務省ホームページより)というのは、こういうことらしい。

 しかし、法務官僚が思うほど、市民は無責任ではないし、思慮分別がないわけでもない。「有罪率99・9%」といわれる日本の刑事裁判の在り方が、裁判員制度実施で変化するのは間違いない。

 【裁判員制度】殺人など重大な犯罪で起訴された被告人の裁判を、裁判官3人と裁判員6人で審理する制度。裁判員は有権者からくじで選ばれる。有罪か無罪かは多数決で決定されるが、裁判官1人以上が賛成しないと、有罪にはできない。裁判員は刑の重さも判断する。2009年5月21日実施。

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