2009年7月2日木曜日

安藤隆春新警察庁長官の消せない過去

 6月26日、安藤隆春氏が警察庁次長から同長官へ昇格した。安藤氏は1972年採用の警察庁キャリア。1995年10月、群馬県警前橋署生活安全課員らが暴力団の犯罪を見逃すなど、便宜をはかる見返りとして、拳銃の提供を受け、捜査で押収したように偽装していた事件が発覚したときの同県警本部長。

 銃刀法違反などで起訴された元前橋署生活安全課員(懲戒免職)に対し、1996年3月14日、前橋地裁(奥林潔裁判長)は懲役2年、執行猶予5年の判決を言い渡した(確定)。そのなかで「部下あるいは同僚の違法ないし不当な扱いを見過ごしてきた警察内部の体質の問題性も厳しく指摘せざるをえない」と批判している。

 しかし、筆者が『週刊文春』(1996年11月21日号)に記事を執筆するため、安藤氏(当時、橋本龍太郎総理大臣秘書官)を取材すると、「そちらの見方(組織の問題点を個人に押しつけた)は我々の考えと違います」と答えた。これまで取材してきた中央省庁キャリアと比較しても、とりわけ官僚的な言動が印象に残る。

 安藤氏といえば、警察庁長官官房長時代の2004年11月4日、参議院内閣委員会で神本美恵子議員(民主党)と以下の質疑応答を行ったことでも知られる。

神本議員 安藤官房長、初めて今日やりとりさせていただいていますけれども、これまでのご経験で餞別というようなことを受け取られたことありますか、個人のことで。

安藤官房長 餞別制度につきましては、すでに平成8年か9年ですか、警察内部で、それ以前からそういうものをなくすようにということは徹底を図っておりましたが、平成8年や9年の通達で完全にそれを徹底するということで、それ以後はないものと私は承知しております。個人的な経験ということでありますが、その以前、昔、ずっと以前に、これはまあ警察だけじゃなくて、そういうことで慣行として個人的なやりとりのなかでということで受け取ったということは昔あったと記憶しております。

 単行本『報道されない警察とマスコミの腐敗 映画『ポチの告白』が暴いたもの』で、原田宏二・元北海道警釧路方面本部長は、「警察の裏ガネは、異動の際の餞別や部内の懇親会費、冠婚葬祭費、タクシーチケットの支払い、上級官庁や他官庁の接待費、議会対策などに使われており」、自分が「署長や防犯部長のポストのときは、餞別は総額200~300万円程度だったと思います」と打ち明け、「安藤官房長が『餞別制度につきましては…』と口をすべらせたとおり、裏ガネも餞別も『制度』『システム』なのです」と話している。

 安藤氏が、警察と暴力団との癒着や警察の裏ガネづくりという問題を、なくす方向ではなく隠蔽する方向へ進むことは、同氏の過去の言動からして十分予想される。

0 件のコメント:

コメントを投稿