2009年6月21日日曜日

警察が犯人を決めるから、裁判員はいらない(1)


 「佐藤梢さん殺害事件」(後注)で「犯人」として警察から全国指名手配されている小原勝幸氏(29歳)の家族らが一昨日、日本弁護士連合会に対し、「小原勝幸を殺人事件の犯人として指名手配することを中止すること」などを警察へ働きかけるよう、人権救済の申し立てを行った。その後、小原氏の父親らは弁護士会館(東京都千代田区)で記者会見に臨んだ。

 父親は「勝幸が本当に犯人なら、死刑になってもかまわない。しかし、本当は、勝幸は被害者で、(すでに殺害されて)どこかに埋められているのではないか。このままでは、勝幸の(別れた妻との)子どもは一生、『殺人犯の子ども』と言われる」と話し、「地元のマスコミは警察が言うがまま、事実をねじ曲げて報道している。警察と一緒になって、私たちを苦しめるのがマスコミなのか」と涙声で訴えた。

 ブログ『黒木昭雄の「たった一人の捜査本部」』で、この事件の真相を追求している元警視庁巡査部長でジャーナリストの黒木昭雄氏は、「警察は本気で小原を捜索していない。もし小原が他殺体で発見されたりすれば、被害者を『犯人』として全国指名手配した大失態が明らかになるからだ」と述べた。

 元北海道警察本部釧路方面本部長で「市民の目フォーラム北海道」代表の原田宏二氏は、「警察が小原を『犯人』と決めつけ、ポスターやホームページに掲載し、たくさんの市民の目に触れさせている。5月から『裁判員制度』(後注)が実施されているが、これで裁判員に予断を与えないと言えるのか」と疑問を呈した。

 小原氏の家族らの代理人・清水勉弁護士(東京弁護士会)は、「警察が小原を『犯人』扱いしていることに対する国家賠償請求訴訟なども検討中」と話した。

 判例でも「『犯人』とは有罪の言渡しを受けた者を指す」とされている。警察が小原氏を「被疑者」や「容疑者」ではなく「犯人」として、ポスターやホームページで取り扱うのはいかにもマズい。

 本ブログ『きょうの出来事』では警察庁に対し、「有罪判決が確定していない者を『犯人』とする理由は何か」と文書で質問したが、「本日(6月19日)中には回答できない」(広報室)と電話があった。回答が寄せられしだい、掲載するつもりだ。

 写真は左から黒木氏、原田氏、清水弁護士。

 【佐藤梢さん殺害事件】2008年7月1日、岩手県下閉伊郡川井村で佐藤梢さん(当時17歳)の遺体が発見された。同月29日、警察は佐藤さんの知人の小原勝幸氏(当時28歳)を殺人容疑で全国指名手配。10月31日には、警察庁が小原氏の検挙に結びつく情報の提供者に対して、上限100万円の捜査特別報奨金を支払うことを公告した。一方、小原氏は恐喝と傷害、銃刀法違反事件の被害者として警察へ被害届を提出していた。その捜査が大詰めを迎えたとき、佐藤さんが殺害され、小原氏が行方不明となった。

 【裁判員制度】殺人など重大な犯罪で起訴された被告人の裁判を、裁判官3人と裁判員6人で審理する制度。裁判員は有権者からくじで選ばれる。有罪か無罪かは多数決で決定されるが、裁判官1人以上が賛成しないと、有罪にはできない。裁判員は刑の重さも判断する。2009年5月21日実施。

2 件のコメント:

  1. コメントはしないけれど必ず読んでいます。

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  2. ありがとうございます。
    日々、新たなネタを探し続けております。

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