2009年6月17日水曜日

半世紀を経て、今の新聞に問いかけるもの

 暴力団と、一部の警察・政治家が癒着し、新聞・テレビなど記者グラブ所属のメディアが、その広報的な機能しか果たさなくなって久しい。しかし、神保町シアターで6月14日・15日・18日・19日の4日間上映の、1950年作品『ペン偽らず 暴力の街』(山本薩夫監督)を見ると、この映画が製作された頃は、少なくともまだマスメディアが、権力に対する「監視者」としての役割を果たしていたようだ。

 同映画は、同シアターが企画した、映画評論家・川本三郎氏セレクトによるローカル色豊かな昭和20年代~30年代の日本映画の名作を連続上映する「昭和映画紀行~観光バスの行かない町」の一作品として選ばれた。

 舞台は、埼玉県本庄市。原作は、当時の朝日新聞社・浦和支局の有志。当時の本庄市では、地元政治家とつながりのある暴力団が、市民へのユスリ、タカリを繰り返し、警察もそれを黙認していた。主人公である新聞記者たちは本庄市に臨時支局を設け、それらの実態を新聞で連日のように追及。それまで暴力団からの報復を恐れ沈黙していた市民たちも、新聞に後押しされ、暴力団追放・警察署長解任を求める大規模なデモに発展、目的を達成する。記者役を、かつての名優・志村喬、宇野重吉らが生き生きと演じる。

 初日、2日目は、同シアターの99席がほぼ満席に近い状態だった。見終えた直後の来場者に感想を聞くと、「かつて飲食店を経営していた時、暴力団の嫌がらせにあったが、警察も新聞も何の助けにもならなかった。ふがいない今の新聞記者にこの映画を見てもらいたい」(70歳・男性)、「映画の背景になっている時代に比べ、今の新聞は完全に警察や暴力団になめられている」(62歳・会社員)と、今の大手一般紙と比較する声が多かった。

 1950年の作品であるが、半世紀を経て、今の新聞ジャーナリズムに対するアンチテーゼの「新鮮な映画」と言えよう。

※神保町シアターでの公開は、あと2日(1日1回)
●6月18日(木)16:20~、6月19日(金)18:45~
●1時間51分
●1200円
●東京都千代田区神田神保町1-23
TEL:03-5281-5132 
地下鉄神保町駅・A7出口 徒歩3分、JR御茶ノ水駅・御茶ノ水橋出口 徒歩8分

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