2009年5月25日月曜日

たった一人の捜査本部


 5月20日、『たった一人の捜査本部』が設置された。元警視庁巡査部長でジャーナリストの黒木昭雄氏(写真)のブログのことだ。

 昨年7月1日、岩手県下閉伊郡川井村で佐藤梢さん(当時17歳)の遺体が発見された。佐藤さんは手で首を絞められたうえ、橋から沢へ突き落とされたとみられる。同月29日、警察は佐藤さんの知人の小原勝幸氏(当時28歳)を殺人容疑で全国指名手配した。10月31日には、警察庁が小原氏の検挙に結びつく情報の提供者に対して、上限100万円の捜査特別報奨金を支払うことを公告した。現在まで小原氏の行方は不明だ。

 この事件を取材してきた黒木氏は、警察の捜査に疑問を持つ。本当は小原氏も被害者なのではないかと。つまり、佐藤さん同様、殺害されているのではないかと。

 というのも、小原氏は恐喝と傷害、銃刀法違反事件の被害者として警察へ被害届を提出しており、佐藤さんが殺害され(遺体検案書では6月30日から7月1日までと推定している)、直後、小原氏が行方不明となった当時、その捜査が大詰めを迎えていた。しかも、6月下旬、突然、小原氏は被害届の取り下げを警察へ申し入れるが、聞き入れられなかった。

 ところが、警察もマスコミも、小原氏が恐喝と傷害、銃刀法違反事件の被害者だったことは黙殺し、同氏が佐藤さんを殺害したというストーリーを組み立てている。そこには、どのような裏事情があるのか。それをリアルタイムで報告していくのが『たった一人の捜査本部』だ。本日も岩手県内で取材を続ける黒木氏に聞いた。

 「最近まで週刊誌で記事にしようと動いていたのですが、ダメでした。記者クラブに加盟する新聞社やテレビ局以外でも、警察に不利益な報道を自己規制する傾向が強まっているようです。佐藤さんの1周忌まで、あと1カ月余り。いてもたってもいられなくなり、『たった一人の捜査本部』を設置しました」

 黒木氏の異名「捜査するジャーナリスト」は、筆者が名づけた。今後、黒木氏がどれだけ真相に迫れるか、要注目である。

 単行本『報道されない警察とマスコミの腐敗 映画『ポチの告白』が暴いたもの』から黒木氏の言葉を引きたい。

 「警察官もマスコミ記者も、今の自分の生活を守ることにしか興味がない。そういう気持ちはわからないわけではありませんが、率先して組織と同化し、そこから飛び出した者をバカにする意識の低さにはあきれます。どうせ歯車になるなら、なぜ組織をよくする方向に回転しないのか。せめてその気概だけでも見せてほしいものです」

 『たった一人の捜査本部』は心ある警察官やマスコミ記者に訴えかけているようにも見える。

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